姉が中学でいじめられていた。いつも学年トップの成績を取りながら、おとなしい性格のせいでクラスで孤立し、根も葉もない噂まで立てられた。学校へ行けなくなった姉は塾で勉強を続け、それでも成績は落とさなかった。両親がレストランを営んでいることもあって姉はぽっちゃりしていた。女子の間では体型を笑われることもあった。ダイエットもしたがうまくいかず、家族みんなで悩んだ中学時代だった。
俺は姉と違って勉強ができない。特に英語はからっきしだ。しかし社交性はある。いわゆるお調子者ってやつだ。そんな俺が姉と同じ中学に入り、そのあと地元で一番頭が悪いと言われる高校に滑り込んだ。両親は「効率だから問題ない」と笑ってくれた。一方で姉は国立大学に合格。英語が得意で、いつかその関係の仕事をしたいと言っていた。
高校生活は楽しかった。同じような学力のやつらが集まった世界で、毎日が騒がしくて笑いが絶えなかった。そんなある日、2学期になって外国人の転校生が来るという噂が広がった。しかも女子だという。
男子は色めき立った。金髪の美女が来るに違いないと浮き足立った。女子もどんな子が来るのかと大騒ぎだった。
転校生がやってきた日、先生が先に教室に入り、その後ろからリサが入ってきた。クラス中が期待の目で入口を見つめる。恥ずかしそうに入ってきたリサは、想像していた金髪美女とは違った。教室のあちこちから失望のため息が漏れた。
「私、日本、少し」
リサはそれだけ言って頭を下げた。先生が補足してくれたところによると、家庭の事情で引っ越してきたらしい。日本語はほとんど話せないそうだ。リサが席に着くと、女子たちがひそひそと意地の悪い笑いを漏らした。「金髪美女じゃなくて、金髪のデブじゃん」と。
リサが英語を理解できないで良かったと俺は思った。でもリサはなぜか俯いていた。言葉が分からなくても、悪く言われている雰囲気は伝わるものらしい。俺は胸が痛んだ。体型を馬鹿にされているリサを見て、姉のことが頭をよぎった。
俺は何とかしてやりたかった。でも俺は英語ができない。日本語で話しかけるしかなかった。身振り手振りで伝え、それでも通じなければ絵を描いた。必死だった。
そんな俺を見て周りの女子たちが冷やかす。「え、裕二、リサのこと好きなの? 外国人なら誰でもいいの? 」
俺はリサと一緒にいる時間を増やした。弁当を食べる時も移動教室の時も常に隣にいた。とにかく少しでも笑ってほしかった。いじめが大嫌いだった。自分と違うというだけで馬鹿にするのは間違っている。他人の人生に暗い影を落とすなんて許されることじゃない。その思いだけが俺を動かしていた。
そんな俺の願いが通じたのか、リサは少しずつ笑ってくれるようになった。日本語も少しずつ覚え始め、冬が近づく頃には自分のことを話してくれるようにもなった。リサは父親と二人暮らしだという。家に帰れば家事をこなしているそうだ。外国で暮らしながら学校に通い、家事までこなすなんて、本当にすごいと思った。
ある日、リサが悩みを打ち明けてきた。服を買いたいけど、店員が何を言っているのか分からない。ネットショッピングも土地柄が違って分からない。力になってやりたいが、女の買い物なんて俺にはさっぱり分からない。そこで姉に相談することにした。
「私が一緒に行くっていうのはどう? 」
姉はそう言った。その手があったか。リサも喜ぶに違いない。次の日、早速リサを誘った。
「今度の土曜日、よかったら服を買いに行かない?

姉ちゃんが一緒なんだけど、英語が得意だから安心して」
「少し緊張する。裕二も来てくれるんでしょ? 」
「もちろん行くよ。役に立たないかもしれないけど、荷物持ちくらいはできるから」
「嬉しい。楽しみにしてる」
リサは心から嬉しそうに笑った。俺は深く考えずに誘ったが、学校以外で会うのはこれが初めてだ。妙に緊張した。
土曜日、待ち合わせ場所に姉と行くと、すぐにリサもやってきた。「初めまして。リサです」と、リサは緊張しながら片言の日本語で挨拶した。姉は英語で返す。自己紹介をしているらしい。姉の流暢な英語を聞いたリサは驚いた顔をしたが、すぐに目を輝かせて英語で話し始めた。
俺には何を話しているのかさっぱり分からない。でも二人はとても楽しそうだ。俺っていらないんじゃないかと思ったが、荷物持ちくらいはできると自分で言った手前、そう言うわけにもいかない。
姉はしっかり下調べをしてきたようで、二人は楽しそうに試着を繰り返した。午前中で買い物を済ませ、レストランで食事をすることにした。
「裕二、今日はありがとう。自分の思っていることが伝わって、とても嬉しかった」
リサは満面の笑みでそう言った。「それならよかった。姉ちゃんと話したくなったら、いつでもうちに来ればいいよ」と俺が言うと、リサが一生懸命に言葉を理解しようとする。それを見て姉が英語に訳すと、リサの顔がパッと明るくなった。「ありがとう。行きたい」と。
やはり日本語は難しい。俺はこの時初めて、英語を勉強しておけばよかったと後悔した。
月曜日、学校に行くとリサは嬉しそうに姉の話をしていた。あの後も姉と連絡を取り合っているらしい。そして「来週の日曜日にクラスの女子と出かけるから、その時に着る服を買えてよかった」と姉に言っていたそうだ。
今までそんな話はなかったから、正直安心した。リサもクラスに馴染めたんだと嬉しく思った。
その週の日曜日、俺は欲しかったゲームを買いに出かけた。すると偶然、リサと女子軍団に遭遇した。声をかけると邪魔になりそうで、気付かないふりをして通り過ぎようとした。しかし様子がおかしい。
コーヒーショップで、お金を払っているのはリサだけ。他の派手な女子たちは、チャラそうな男たちとふざけ合っている。「なんだ、この光景は」。リサは新しい服まで用意して楽しみにしていたのに、あんな扱いをするなんて。
腹が立った俺は、リサの元へ行った。
「リサ、大丈夫? 」
俺が声をかけると、リサは驚いた表情で俺を見た。そして目に涙を浮かべながら俯いた。全てを察した俺はリサの手を引き、女子たちのところへ向かった。
「お前ら、何やってんの? 」
「あれ?
裕二じゃん。何やってんの? 買い物? リサが金持ちだから奢ってくれるってよ。裕二も奢れよ」
悪びれる様子もなく平然と言ってのける。「ああ、リサに金を払わせてるだけだろ。みっともねえな。自分のものくらい自分で払えよ」。
するとチャラ男が俺に近づいてきた。「なんだよお前。その女のこと好きなのか? 俺らは楽しんでるんだから、ぶち壊すんじゃねえよ」
普段はビビりの俺だ。こういう一発触発の雰囲気は苦手だ。でも、この時は引くわけにはいかなかった。
「そうだよ。好きに決まってるじゃねえか。俺の彼女なんだからな」
俺がそう言うと、みんなゲラゲラ笑い出した。「マジで受けるんだけど。裕二とリサって付き合ってたんだ。笑える」「裕二ってブスが好きだったんだ。あ、それとも外人なら誰でもいいのか?
」
リサはずっと俯いたままだ。もしかして泣いているのか。公衆の面前で馬鹿にされて、平気なわけがないよな。
「お前ら、マジで分かってないな。とりあえず今日はこれでリサを連れて帰るから、ちゃんと金返せよ」
そう言うと、俺はリサの手を引いてコーヒーショップを出た。そのまま五分ほど歩いて、我に返った。
「ああ、ごめん。なんか面倒なことにしちゃったね。月曜日になったら転校するから。リサには迷惑がかからないようにするから、大丈夫だよ」
俺がそう言うと、リサは泣きながら話し出した。
「裕二、私、分からなかった。みんな話してくれたから、友達になったと思った。でも違った」
そう言って涙を拭う。「でも裕二が来てくれて、とても嬉しかった。私、みんなといるのは悲しかったから」。
作ったような笑みを浮かべるリサを、こんな状態で家に帰すわけにはいかない。
「よかったら、うちに来ない? もう少ししたら姉ちゃんも帰ってくると思うから」
「行きたい」
リサはそう言って、ほっとしたような笑顔を見せた。この時に優しい言葉をかけてやれれば良かったのに、俺は逆に責めるようなことを言ってしまった。
「なんで相談してくれなかったの? みんな彼氏を連れてくるって分かったら、行かなきゃよかったのに」
リサは言葉の意味がよく分からず戸惑っていたが、俺が怒っていることだけは分かったようだ。「裕二、ごめんなさい。困ったことがあったら、裕二に相談する」。
「前から言ってるじゃん。まあいいけど」
こんな自分が嫌になる。家に着くと、洗濯物を取り込んでいた母が出迎えてくれた。
「あら、裕二、お帰り。お隣はもしかしてリサちゃん? 」
明るい母のおかげで空気が柔らかくなった。「初めまして。リサです」と挨拶するリサに、母は「あらあら、可愛い子ね。お人形さんみたい」と微笑んだ。
俺の部屋に連れて行き、今日のことを話すつもりでいた。しかしリサは俺のパソコンに興味津々だ。「これ、裕二のパソコン?
できるの? 」
「ああ、使えるよ。大したことないけどさ、こんなの作ってるんだ」
そう言って、独学で作った自作ゲームを見せた。「すごいね。これ、教えてもらって作ったの? 」とリサは目を丸くして驚く。めちゃくちゃ恥ずかしいけど、嬉しかった。
「いや、教えてくれる人はいないから独学だよ。だから変なところがたくさんあるけどね」
「裕二は、ゲームを作る仕事がしたいの? 」
その問いに、答えられない自分がいた。確かに子供の頃はゲームクリエイターになりたいと思っていた。でも学力がないから諦めて、ゲームは楽しむ側でいいと自分に言い聞かせていたのだ。
「本当はなりたいんだけどさ。俺、勉強できないから。ゲームは休みの日にやって、仕事は他のものをって考えてるんだ」
俺の言葉を聞いて、リサは残念そうな顔をした。するとそこへ帰宅した姉が顔を出した。
「あれ?
リサちゃん、来てくれたの? 」
姉の登場に、リサは安心したように喜んだ。その日は姉も混ざって一時間ほど話して、リサは帰っていった。リサが帰った後、俺は家族に今日見たことを話した。家族はみんな激怒した。
「何それ? そんなの友達とは言わないよ」「ひどい子たちね。裕二、守ってあげなさいよ」「もう二度とあんな思いをさせたくないからね」
「俺、頑張るよ」
家族の言葉を受け、俺はリサを守っていこうと心に決めた。
翌日学校へ行くと、女子たちが朝から騒いでいた。
「裕二マジでリサと付き合ってんの? 裕二の女の趣味が悪すぎて笑えるんだけど」
「うるさいなあ。お前らに関係ないだろ。ほっといてくれ」
俺は否定しなかった。下手に反論すれば、女子たちは面白がって話を大きくするからだ。お調子者の俺にとって、この程度の噂は痛くも痒くもない。この頃になると、リサも日本語がかなり聞き取れるようになっていた。
半年後、俺たちは無事に進級した。二年生になり、リサと離れるかもしれないと不安だったが、願いが叶って同じクラスになれた。ある日、リサが言った。
「パパが裕二にお礼がしたいって言ってるの。今度、うちに遊びに来てほしい」
お父さんか。緊張するな。でも断る理由はない。俺は快く返事をし、リサの家を訪問することになった。リサはお父さんと二人暮らしだ。お父さんの仕事の関係で日本に来たらしく、リサは家事をこなして働く父親を支えているらしい。
週末、約束の時間に待ち合わせ場所へ行った。迎えに来てくれたリサに連れられて家に向かう。母と姉が手土産を用意してくれたので、それを持って緊張しながら歩いていく。家の前に着いて言葉を失った。
「マジでここがリサの家なの?
」
呆気に取られながら言うと、リサは「そうよ。パパと二人で住んでいるけど、広すぎて掃除が大変」と言って案内してくれた。そこは街中で誰もが知っている豪邸。しかも、国際的に有名なゲーム会社の別荘と言われている建物だ。実を言うと、ゲーム好きの俺はここまで記念撮影に来たことがある。
「もしかして、お父さんって社長なの? 」
リサは頷いた。憧れの人に会えるのに、俺は普段着で来てしまったことを後悔した。
「パパ、裕二が来てくれたよ」
すると奥から、テレビで見たことがある社長さんがやってきた。「いらっしゃい、裕二君。いつもリサを助けてくれてありがとう」。緊張でガチガチになり、頭の中は真っ白だった。なんてったって、俺の大好きなゲームを作った人なんだから。
「軽く食べられるものを作ってくるね。パパ、裕二ね、家でゲームを作ってるんだって。見せてもらったけど、誰にも教えてもらったことないとは思えないクオリティだったよ」
リサがそう言うと、社長さんが興味を示した。「いいね。見せてほしいな」。
実はこの日、リサに「ゲームの続きがやりたいからパソコンを持ってきて」と言われて持ってきていたのだ。まさかこんな展開になるなんて。俺は恐る恐るパソコンを開き、アプリを立ち上げた。
「おお、ちょっと見せてくれないか」
そう言って画面を覗き込む。まるで審査されているみたいだ。しばらくして、社長さんが言った。
「本当に誰にも教えてもらったことないのか? すごいね。独学でここまでできるとは、かなり努力したんだね」
プロのゲーム会社の社長に褒められるなんて、夢にも思わなかった。リサが料理をしている間、ゲームについて色々な話をした。しばらくして料理が出来上がり、三人で食べたが、自分と同じ年の女の子が作ったとは思えないほど美味しかった。
帰り際、社長さんが言ってくれた。「裕二君、またうちにおいで。またゲームの話をしたいし、何より君には能力がある」。
これまで才能があるなんて、誰かに言われたことなんて一度もなかった。頭のいい姉とお調子者の弟と比較されて、笑われるだけだった。でも、それが嫌だったわけじゃない。実際に勉強は苦手だったし、姉のように頑張っていなかったのだから。でも、自分のやってきたことを認められるって、本当に嬉しいものなんだな。
家までの見慣れたはずの風景が、その日は違って見えた。好きなことは壁にぶち当たっても、打ち明けようと必死になれる。勉強が好きだったら、俺の人生も少しは変わっていたかもしれないな。
一年の終わり頃に俺とリサが付き合っているという噂が流れたが、もうこの頃には消えていた。俺もリサも相手にしなかったから、面白くなかったんだろう。二年になってもお調子者の俺はふざけて先生によく怒られていた。リサの体型をいじる連中も飽きたようで、何も言ってこなくなった。リサは日本語も随分と喋れるようになり、友達と楽しそうにしている。その姿を見て、ほっとした。
俺とリサの仲は一年の頃と変わらず、一緒に帰ったり、時には家で課題をやるほどだった。親友に近いと思う。と言っても、俺はそれでは満足できなかった。素直で優しいリサに、だんだんと惹かれていたからだ。でも、そんなことを伝えたら関係が壊れてしまう。月に一度はリサのお父さんとも食事をしている。その時間も俺にとって貴重なものだった。
高校生活は毎日が楽しくて、時間が進むのが速く感じる。あっという間に三年になり、リサとはクラスが離れてしまった。こうやって疎遠になっていっちゃうのかな。それは嫌だな。俺は頻繁にリサを誘い、一緒にいる時間を作った。それでも同じクラスだった時よりは確実に少ない。
三年になると就活がある。俺は学校に求人を出した企業の中から就職先を探して働くつもりでいた。そんなある日、リサが言った。
「裕二、パパが話があるって言ってるの。近いうちに来れない? 」
俺はリサに誘われたことが嬉しくて、早速次の週末にお邪魔することにした。リサの家に着くと、リサが気まずそうに言った。「パパがどうしてもって言うから、無理って言えなくてごめんね」。なんだか不安になった。
「裕二君、呼び出してごめんね。パソコンは持ってきてくれた?
」
「はい」
「新しいゲームを作ってるんですが、まだ途中なので完成形ではないです」
「全然構わないよ。見せてもらえるかな? 」
そう言って俺の自作ゲームを見ながら、社長さんが訪ねてきた。
「ゲーム関係の会社に就職は決まった? 」
俺は首を横に振る。
「俺、成績悪いからどこも決まってません。近所の工場でも受けようかと思ってます」
「ということは、まだどこにも決まっていないということだね。……そうか。じゃあ、うちにもチャンスはあるな」
そう言って、会社のパンフレットを出した。「よかったら、うちの会社で働かないか」。
「え? 」
自分でも驚くくらい大きな声が出た。「君は非常に優秀な人材だと、私は思っている。だからこそ、逃すなんてありえない。どうか考えてもらえないだろうか」。そう言って、俺みたいな子供に頭を下げてきた。
「ちょっと待ってください。俺みたいな高卒が行っていい会社じゃないです。有名大学卒でも難しいと言われている会社ですよ」
「私はね、君には才能があると思っているんだ。それに人間性も素晴らしい。私もリサも、君に救われたんだ。してもしきれないよ」
「救ったなんて、俺はそんな大それたことしてませんよ」
「君の人柄、特に社交性は素晴らしい。それに人を差別しない優しさがある。仕事をしていく上で大事なのは人間性だ。頭が良くても人間性が欠けていたら、いいものは作れない。だからどうか、検討してもらえないだろうか」
考えるまでもなかった。俺には願ってもない話だった。
「働きたいです。本当はゲームクリエイターが僕の夢でした。一生懸命働きますので、よろしくお願いします」
リサのお父さんはとても喜んでくれた。「本当かい?
ありがとう。これからよろしく」。俺たちは固く握手を交わした。感極まっていたからか、俺の目から涙が溢れた。
学校に報告すると、担任も進路担当も驚いていた。しかもリサが、姉と一緒に働きたいと言い出したのだ。姉に伝えると、目を丸くして驚いていた。なんでも英語が堪能な秘書が辞めてしまうということで、ちょうど代わりを探していたらしい。姉とリサは、一緒に買い物に行った日から度々会っていた。英語で自分の気持ちを吐き出して、それを全て受け止めてくれる姉に、リサは救われたという。
こんなまさかの展開で、俺たち兄弟は超大手のゲーム会社で働くことになった。高校を卒業した俺は、夢への一歩を踏み出す。入社してすぐにゲーム開発部へ配属された。まだ現実感がない。しかし、度々行われる社内コンペで、それが打ち消された。そのコンペは人事評価につながるそうだ。なんと入社一年目の俺のゲームが評価され、新しいプロジェクトが立ち上げられた。そして、リーダーにまで抜擢されたのだ。完成したゲームは爆発的なヒットを記録し、俺は絵に描いたようなスピードで出世した。
入社二年目に入ると、俺はリサに告白することを決意した。仕事をするリサはどんどん魅力的になっていき、俺はそんなリサにどうしようもないほど惹かれていた。
「俺はリサが好きだ。リサは弱音を吐かないから心配になる。俺には本当の気持ちを見せてほしい」
「本当に私は、高校の頃からずっと裕二のことが好きだったよ」
「え、俺もそうなんだけど」
お互い、関係が壊れるのが怖かったんだな。俺たちは顔を見合わせて笑った。順調に交際を重ね、三年が過ぎた頃、俺はリサにプロポーズし、見事に成功した。両家もすごく喜んでくれた。
ちょうどその頃、高校を卒業して初めての友人の結婚式があった。俺は出席し、リサと結婚することを報告した。みんな驚いていた。そして現在のリサを見せると、さらに驚愕した。リサは二十キロのダイエットに成功し、誰もが振り返る美女になっていたのだ。最近では美人副社長として雑誌に取り上げられるほどになった。さらに自身の経験を生かして、ダイエットジムの経営にも着手した。もちろん、そこでの社長はリサだ。そのジムは話題になり、大盛況だった。
あの時、リサを利用した同級生たちが近寄ってきて、慣れ慣れしく話しかけてくることもあった。「あら、どちら様でしょうか。私、嫌な思い出は忘れることにしているんです」と言って追い返したから、気持ちが良かった。まあ、男子からは羨ましがられたけどな。
リサのおかげで毎日が楽しくて仕方ない。頭が悪かった俺はゲームクリエイターの道を諦めていた。でもリサに出会えたことで、業界大手の会社に入れて、好きなことを仕事にしている。これも全てリサのおかげだ。この充実した日々をリサと共に歩める幸せを、俺は大切にしていきたい。